佐々木耕司コラム

「大会の運営と人々のささえ」について


皆さんこんにちは。K-snow JAPAN代表の佐々木耕司です。
3月の初旬にさまざまな全日本大会が行われ、自身のチームの選手(Japan-Factory,佐々木塾)のサポート&応援に行ってきました。その中で特にうれしかったことがありました。それは、真の日本一を決める大会である、SAJ全日本大会パラレル大回転にて斯波正樹選手が優勝、横井謙斗選手が準優勝という好成績をあげることができました。(我がチームが発足して12年目の快挙)これは、選手達の日々の努力の賜であり、多くの人たちにささえられてきた結果であり、とても嬉しく思います。また、これらは以前私と共にこのチームで選手活動をしたOBの選手達とのトレーニングや、合宿等で一緒に過ごした時の経験が次の世代に引き継がれたことであり、私のコーチ哲学の一つである、”一人一人の選手と向き合っていく”ということを行い続けてきたこと、それらにつきあってくれた選手達のおかげであり、本当に感謝しています。昔、私も同大会にて優勝することができました。その時のこと振り返ってみると、両親、所属していたショップ、用具をサポートしていただいたメーカー、サービスマンの方、など、そしてなによりもその大会を運営していただいた多くの役員・ボランティアの方々の支えがあったからこそ、優勝ができたのだと思い、心から感謝しています。(もし、それらの方の支えがなかったら、私が優勝することはなかったと思われますし、その後、今のような人生となっていたかさだかではありません)その他の選手達の中には、自分の成果を発揮できた人や、できなかった人とさまざまでしたが、参加した選手達の意気込みを感じることができました。大会に目標をもって臨んだ選手は、自身の目標としている結果が出せずに大きく落ち込んだり、明確な目標を持たずに挑んだ選手はそれなりの結果に満足しているようでした。その中で感じたこととして、やはり大会へ向けての準備をしっかりと行ってから大会に挑み、その結果を真摯に受け止め、次に向けていかに早いスタートができるかが、その選手の目標到達に向けての近道になり、そのためには自身のしっかりとした精神力が大切であり、まわりで支えている人の助言やヘルプがその選手の精神力を育てあげ、早い成長を助けるのであるということをあらためて感じました。

今回は、”大会の運営と人々のささえ”についてお話ししたいと思います。
多くの大きな国際大会において、大会の成功のカギをにぎっているのは、”運営役員”すなわちボランティアの方であるといわれています。多くの役員がいた方が、選手やギャラリーの整理等、あらゆる細かい事項が綿密に行われ、スムーズな大会運営が可能となります。しかし、それらの役員全てに日当等をしはらうと、とても多くの予算が必要となり、参加選手のエントリー代が高くなったり、十分な数の役員を集めることができず、スムーズな大会運営が行われないということが考えられます。先日幕を閉じたバンクーバーオリンピックには、選手とチーム関係者は約6500人、大会に携わったボランティアは1万8500人、報道関係者は1万800人であったそうです。これらの数字を聞いて、さすが国をあげての事業であり、4年に1度の世界的イベントは、世界最大のイベントであり桁違いであると感じました。オリンピックに参加する選手は、各国を代表するアスリートであり、彼らがその舞台に上がるまでに多くの大会を経験し、大会運営の裏側(役員の動き)を熟知している選手が多く、ボランティアの方々に”いつもご苦労様”、”雨の中ありがとう’という言葉をかけている選手が多く感心しました。欧米での大会では、選手の親が手弁当で大会役員(ボランティア)を手伝い、自分の子供や知人の子供を応援しながら大会運営のお手伝いをしている光景があたりまえのようにあります。それらは、昔からの伝統であり文化となっていることが背景と考えられ、日本のスポーツの文化(スポーツ少年団、野球など)にも同様のことがあり、ウィンタースポーツにおいてもそのように機能しているところもあり、今後さらに多くの地域に広がっていくことを期待します。
国内の大会に目を向けてみると、スキー団体が主催する大会については、大会を開催する地域から多くのボランティアの方が参加されるため、とてもスムーズかつ整備されたバーンコンディションにて運営されています。聞くところによると他の競技団体の大会役員は、日常生活と同じかそれ以上の日当にて請け負って大会の手伝いをしているため、あまり多くの役員数がいなく、参加選手のエントリー費が高いわりには、整備のいきとどいてないバーンコンディションの中競技を行っているようです。
先日、実際に目にして驚いたのが、委員長などの競技の要となる人たちがテントの中で、コーヒーなどを飲みながら大会を観戦している姿でした。運営のトップとなる人は普通、コース上で選手、役員すべてを監視、コントロールすることが仕事であり、他スタッフに食事を与えたり、トイレに行かせたりという気遣いをすることも大切であると思いますが、どうやら、日当を払っているのだから各自しっかり働くようにという考えのもと行っているように見受けられました。スキー団体が主催する大会運営の哲学とも思える、”みんなで一緒に、選手のために大会を成功させよう”という思いとは大きくかけ離れているように感じ残念でした。

人々の支えについてですが、選手は、両親やスポンサーなどの支えがあり大会に出場できています。その大会は、天候が悪い状態(雨や霧)でも開催され、競技中、大会役員はその場所を離れられず、トイレや昼食も自由に行けない中で、かさもささずに雪の上にずっと立って選手のために各役割や作業を行っています。そのような人の支えを感じ、それのもと、自分の滑りを発揮することができるということを感じている選手はどのくらいいたのか?と思いました。勝利した選手は、その大会のための準備をしっかりとしてきた選手であり、人の支えを感じられる選手であると思います。私は、人のささえを受けているスノーボーダーや選手達の上達を、これからも支え続けていけることが、最近のやりがいと感じています。

大きく伸びる選手の特徴として、多くの人からささえられている。支えられていることを自覚しており、自分の立場や今しなければならないことを知っているということがあると思います。それらの選手が大きく伸びるための取り組みの1例を紹介しますと、主要な大会が終わった春にしっかりと基礎の確認および来期へ向けての滑り込みを行い、そのシーズンの滑りや気持ちおよびイメージを整理することで次シーズンへ向けての早いスタートが可能となるため、さらなるステップアップが可能となります。大きな大会が終わってそのままシーズンを終了した場合、来期のスタート時点で、まずイメージや滑りの取り戻しからはじめ、その後に基礎の確認、新しい用具への対応等、と出遅れてしまうことがありすので、上記と比べてみるとその差は歴然です。K-snow JAPANでは、ゴールデンウィークキャンプまでさまざまなイベントを開催していますので、是非ともご参加いただき、良いイメージで今シーズンを終了し、翌シーズンの快調な滑り出しの準備を行ってみてはいかがでしょうか?

次回もまた皆さんのお役に立てるようなことをお話したいと思います。
楽しみにしておいてくださいね。
2010年03月16日(火) No.58 (コラム)

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