佐々木耕司コラム

「ダックスタンス」について


皆さんこんにちは。K-snow JAPAN代表の佐々木耕司です。私は今、CSBA(スポーツ専門学校)のアスリートプログラムの監修のためにウィスラー(カナダ)に来ています。こちらは11月の降雪量が12年ぶりの大雪となった影響で、この時期と言うのにもかかわらず、ウィスラー&ブラッコムの両山ともベース(麓:ふもと)まで滑って降りて来ることができます。毎年この時期に訪れていますが、3年間の中でベストなコンディションです。ここ数日は、山は雪、ベースは雨という日が続いていましたが、昨日ついにベースにも雪が降り、昨晩からの積雪量はなんと50cmとなりました。気になるスキー場はと言うと、なんと多いところで80cmのとても軽いパウダーでした。この時期にハイシーズンのパウダーが滑れるなんて最高です!

さて今回は、スノーボードのセッティングで後ろ足をテール側へ向ける「ダックスタンス」についてお話ししたいと思います。ボードとブーツを固定するバインディングは、さまざまなスタンス角度で装着することが可能となっており、多くの人たちが悩むところでもあります。
スノーボードでの両足の役割を簡潔に説明すると下記のようになります。

◆前足
軸足となり、舵取りとなります。いわゆるボードが進む向き(方向)をコントロールする役割をします。

◆後ろ足
利き足となり、ボードのスピードをコントロールする役割をします。

ここで、スタンス角度について説明したいと思います。進行方向(ボードの先端の方向)に対して真横(直角)についているものを0度、進行方向に対して真っ直ぐ(平行)についているものを90度と呼びます。
前足の角度は、通常、フリースタイルの場合は12度〜25度程度となり、アルペンスタイルの場合は45度〜60度程度となります。
後ろ足は、ボードのテールが踏みやすいように0度〜9度ほどに向けます。
スタンス角度の決め方については、以下の通りです。

◆前足
ボードからブーツがはみ出さない範囲内の乗りやすい角度にて設定します。

◆後ろ足
最近までは0度〜9度くらいが主流でしたが、スィッチ(得意な方向と逆向きで滑ること)での滑走が一般的となり、それを滑りやすくするために後ろ向き(テール側)へ足を向ける(開く)「ダックスタンス」で滑る人が増えてきました。(※角度はマイナス3度〜12度程度)ダックスタンスの名前の由来は、両足のつま先が外側に開いた形がダック(あひる)に似ていることからこのように呼ばれるようになったようです。
※進行方向をプラスとすると反対(逆)の方向という意味でマイナスと呼ばれています。

それでは、ダックスタンスのメリットとデメリットについて下記へ記したいと思います。

◆メリット
スィッチ滑走の際に進行方向につま先が向いているので、ボードの操作が行いやすく、スピードを出した際にも体が遅れにくくなり、安定して滑ることができます。

◆デメリット
フロントサイドターンで(通常滑走時)、後ろ足のつま先の向きがボードの進行方向へ向きづらいため、足裏へパワーを伝えにくく、ターンの前半でボードがずれやすく、その結果カービングターンがしずらくなったり、ターンが大きくなります。

では、後ろ足の適正な角度とは?に、ついて考えてみたいと思います。
スケートボードやサーフィンをする際の後ろ足に注目してみると、力を入れて一番踏ん張りやすいのが0度付近です。素足で踏ん張ることとスノーボードのようにバインディングにて足が固定されることの違いを加味して考えると、プラス6度〜マイナス6度くらいまでの範囲が力を入れやすい状態であると言えるでしょう。その範囲外の角度にした場合は、それぞれの進行方向へ進みやすいというメリットが多くなる代わりに、力の入り具合が少なくなるというデメリットを考え、実際の滑走にてトライ&エラーして自分に合ったスタンス角度を探してみると良いでしょう。
余談ですが、ウィスラー(カナダ)のスノーボードレンタルショップにて、バインディングのセッティングを見てみると、やはりダックスタンスが主流となっていました。店員に理由を聞いてみると「今、流行っているから!」、「この方がボードの上に立ちやすいんだぜ!」というような感じで、私には????。。。(立ちやすいのは確かにわかるけれども滑りやすくはないような気がするなあ・・・)これからスノーボードを始める知識の浅い初心者には、とてもパンチのある言葉であると思いました。

K-snow JAPANの主催するスノーボードスクールやキャンプでは、安全に上達するために、まず参加者のスタンスが適正かどうか確認してからレッスンを始めています。キャンプでは、レーサー等の競技でより効率の良い滑りを求める方へのスタンスの個別アドバイスを行っておりますので、興味をある方は是非一度訪ねて頂ければと思います。
次回もまた皆さんのお役に立てるようなことをお話したいと思います。楽しみにしておいてくださいね。
2006年12月16日(土) No.2 (コラム)

期待のプロデューサー「佐々木優]


皆さんこんにちは。K-snow JAPAN代表の佐々木耕司です。私は今、恒例のヨーロッパキャンプ開催のためにスイスに来ています。
今年のヨーロッパは、暖かく雪が少ないですが、ここサースフェーは絶好のパックスノーのコンディションに見舞われ、とても良いトレーニングが行えています。常設のスノーボードクロスコースの状態はとてもよく、各国のナショナルチームが次々とトレーニングに訪れており、世界トップレベルの選手の滑りを直に見ながら、彼らと同じコースを滑走してトレーニングを行っています。2010年のバンクーバーオリンピックで新種目としてスキークロスが決定した為か、スキークロスのトレーニングに訪れる選手が多くになったように感じています。

さて、今回はたった一人で、映像の撮影、DVDの制作、リリースまでを行った期待のプロデューサー「佐々木優(すぐる)」氏についてお話ししたいと思います。
私と同じ姓を持つ彼は、かつてはトップスノーボード選手でした。
彼との出会いをさかのぼってみると、約7年前に彼が北海道の高校を卒業した春、スノーボード競技で世界を目指したいと私のもとを訪ねてきたところから始まりました。その時の彼の雪がとけるほどの熱い想いに心を動かされ、年間を通したトレーニング活動を行うプライベートチーム「Japan-Factory」を立ち上げ活動をスタートしました。今思うと、この時から彼の行動力は積極的でした。

我々は年間を通して、次のように活動しました。春は体力測定から始まり、トレーニングプログラム作成とフィジカルトレーニング、夏はニュージーランドに渡り雪上トレーニング&フィジカルトレーニング、秋はヨーロッパへ移動しフランスの最速スノーボードチームと合同トレーニングを行い、冬は長野県に長期滞在しての雪上トレーニングを行いました。
彼のひたむきな努力のかいがあり、その年の冬に海外では無名の彼が強国オーストリアの選手に割って入り、FISジュニア世界選手権大会2000(ドイツ:PGS)にてみごと銀メダルを獲得しました。これは日本人男子選手初となる快挙でした。

彼はとてもまじめで一度火が着くと、とことんやらないと済まない性格で、トレーニングに関してもメニューを完璧にこなさないと気が済まなく、ドクターストップがかかるまで走り続けたり、仕事が終わってから睡眠不足の状態でトレーニングをして風邪を引いたりと、当初は空回りをしていましたが、徐々に選手としての自己管理がうまく出来るようになり、ワールドカップへ出場するまでになりました。
ところが、さあこれからという時に彼から突然の引退の話しを聞きました。それは、スノーボードの競技生活を送っていく中で、仕事とトレーニングを必死に行った結果や資本的な要因、メーカーとの用具関連などの要因でバーンアウト(燃えつきる、意欲を失う)をしたためでした。競技からは離れはしましたがスノーボードが好きでまだ続けたいという彼に、再び競技を始めるきっかけをつかんだり、その他の方向性を見つけてもらえればと言う思いから、一度ウィスラー(カナダ)に行ってみるように私はアドバイスをしました。そこウィスラーは、私が現役時代にトレーニングした場所であり、スノーボードはもちろんのこと、その他の多くの刺激を受け、自分を見つめ直し初心に帰れることが出来た場所であったからです。彼はウィスラーではCSBA
(スポーツ専門学校)に通いながらスノーボードを行い、現在の活動のベースとなる英語や海外の文化・習慣を学び、そこで彼の運命を変える1枚のDVDと出会いました。このDVDとの出会いが彼の新しい目標=「映像で作品を作る」となったのです。
その後彼は、再び新しい目標に向かって必死に働きながら映像の勉強をし、貯めたお金で機材を購入し、作品の出演者を集って素材となる映像を撮影し、そして、歳月をかけて「IMPACT」という作品を完成させました。
この作品には、多くのライダーが登場しています。彼らは、彼が選手時代からを通じての仲間達であり、彼のまじめで明るい人柄や性格が彼らを引き寄せ、今回の作品作りに協力してくれた、彼が一番大切にしている人たちです。

昔一緒にがんばった優が今も頑張っていて、初リリースした作品
「IMPACT」は、この秋、多くのアルペンスノーボードビデオが発売される中、ひときわ群を抜いた仕上がりとなっています。是非一度
「IMPACT」ご覧になって頂ければ嬉しい限りです。なおこの作品は弊社オンラインショップでも取り扱っていますので、興味のある方はご利用いただければと思います。

次回もまた皆さんのお役に立てるようなことをお話したいと思います。
楽しみにしておいてくださいね。
2006年12月01日(金) No.2 (コラム)

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