佐々木耕司コラム

「ワールドカップ最終戦、ワールドカップの現状について」


皆さんこんにちは。K-snow JAPAN代表の佐々木耕司です。現在、富良野(北海道)で行われるFISスノーボードワールドカップ最終戦のアシスタントTD&競技通訳として来ています。もうすでに関東地域では、ぽかぽかとした春の陽気であるのに比べて、こちらは最低気温マイナス7度で道路には積雪があり、まだまだ冬景色という状態です。ワールドカップ最終戦とは、毎年9月から3月までに各国で行われるワールドカップシリーズ戦の最後の大会であり、10回行われている国内大会では初めての開催となります。最終戦へエントリーできる選手は、通常のワールドカップの参加基準とは違い、その年のワールドランキング上位50位以内の選手しか出場することができないという権威ある大会です。(開催地枠として1種目につき約12名の選手が追加で参加することができます)

大会日程等は下記のとおりとなっています。
17日 スノーボードクロス
18日 ハーフパイプ
19日 パラレルジャイアントスラローム
(テレビ放映予定 3月27日(月) BS-1 19:15 〜21:00)

今回の富良野大会のコースをみて思ったことですが、スノーボードの各競技はここ数年でより専門性が上がってきています。ハーフパイプ競技については、以前(約8年前)のハーフパイプでは深さが3.5mあれば最大級であったのに比べて、現在は5.0-5.5mのスーパーパイプにてワールドカップを行うようになりました。これは、ハーフイプを作る機械の開発が進んできたことが要因となっています。

今回は「ワールドカップ最終戦、ワールドカップの現状について」をお話ししたいと思います。スノーボードクロスについては、各セクション(障害物)が大きくなり滑走スピードがより早くなったため、以前は、ハーフパイプと両方に出ている選手もいましたが現在ではほとんどいない状態です。唯一パラレル競技と両方に出場している選手はいますが、最終順位で上位にくる選手のほとんどがスノーボードクロスのスペシャリストがほとんどであるという状態です。
パラレルジャイアントスラロームについては、深いターンを要求されるゲートセットとなってきたため、より高度なテクニックとパワーが必要な状況となってきています。
今後日本人選手がワールドカップで上位になるためには、まずはジュニアからの一環した強化が必要不可欠であり、より専門的なトレーニング(心技体)をしっかりと管理された中で選手が行うことが大切です。そして、チームとしての相乗効果を効率的に引き出せるような、また、それを活用できるような合宿&遠征を行うための環境作りが必要であると考えます。
本来はナショナルチームがそれを行うポジションにありますが、選手を指導したことがなかったり、コーチ経験が初めての人がコーチであったり、コーチ業に命をかけていない人で構成されている現状としては、残念ながら本来の強化がなされておらず、選手自身での上達による競技結果が残されているという現状があると思います。
満足の行く競技結果を残すためには、しっかりとした指導者のもとでトレーニングを行うことが近道であります。しかしながら、スノーボードという歴史の浅いスポーツでは、多くの優秀な指導者があらわれるには時間がかかるという現状があり、早期の指導者育成システムの確立が望まれます。

次回もまた皆さんのお役に立てるようなことをお話したいと思います。楽しみにしておいてくださいね。
2006年03月17日(金) No.2 (コラム)

「トリノオリンピックのスノーボード競技」を振り返って


皆さんこんにちは。K-snow JAPAN代表の佐々木耕司です。ここ最近天気の変化が著しく、ゲレンデの雪がシャバシャバとなり春の陽気となってきましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?私は、確実に昨年よりも多く、雨のスキー場に出ていて外から戻るとまずウェアー類を干す作業におわれている今日この頃です。

さて、4年に1度の祭典、冬季トリノオリンピックが17日間にわたる熱い戦いのうえ閉幕されました。今回は、トリノオリンピックのスノーボード競技を振り返ってみたいと思います。

◆スノーボードクロスについて
今大会より正式種目となった「スノーボードクロス」ですが、全長約1分30秒の長いコースは、さすがオリンピックと言わせるだけの厳しく難しいコースであり、左右のターン技術が問われるバンクと縦へのバランスやエアー技術が問われるウェイブ・ロールがほぼ均等に折り込まれた真の実力が試されるものでした。テレビ放送で見た場合、滑走する選手の横や上からのアングルが多く比較的平坦なコースに見えがちですが、上下の起伏が大きくバランス能力が要求されるコースであり、一般の人ではあそこまで流れよく滑ることが難しいほどでした。そのコースを滑りきる高いスノーボード滑走技術を身につけた各国を代表する世界レベルの選手が参加した大会についてお話ししたいと思います。
やや小さめのバンクが影響して抜きどころの少ないコースのため、第1回戦目から熾烈な上位争いが繰り広げられ、メダル有力候補が次々と姿を消してゆくレース展開となりました。その中、日本男子団表の千村選手は、3位の選手を前に出すことがないようにきっちりとラインを守り2位通過にて見事1回戦を突破しました。さらなる上位進出が期待されましたが、2回戦でバランスを崩し転倒してしまい16位となりました。
女子については、第1バンクと後半のジャンプが唯一の抜きどころとなり、男子同様に第1回戦目から熾烈な上位争いが繰り広げられ、メダル有力候補が次々と姿を消してゆくレース展開となりました。日本女子代表の藤森選手は確実にコースを滑走をして、相次ぐ上位選手の転倒に助けられたこともあり、2回戦を勝ち上がりみごと7位となりました。しかし、5位〜8位順位決定戦の際の最初のバンクで3人がコースを外れてしまった時に数メートル上のゲートにのぼりコースをきちんと通過さえしていれば6位入賞という快挙を成し遂げていたと言うことを考えると非常に残念に思えてなりません。競技は必ずルールがあり大会はそれに基づいて行われるもので、選手がしっかりとそれを熟知し確実に理解することが大切です。大会本番では、あわてることなく、”冷静に”判断できるようにトレーニングをしっかりと行い強化していたのかと疑問に思う瞬間でした。今回に関しては、選手の競技に対する自覚、強化・教育する指導者の自覚がしっかりと行えてさえいれば、初正式種目にて初入賞という結果とともに今後のオリンピックにつながるとてもよい成果をのがさずに済んだと思えて仕方がありません。

 ◆パラレルジャイアントスラロームについて
大会のコースについてですが、バーン状態はとても硬くパックされた状態で良かったです。強いていえばオリンピックのバーンとしては少し斜度が緩かったように感じました。もう少し斜度のある斜面か、斜面変化のある斜面であれば総合的な滑走能力が求められ選手各々の滑走の技術差が出て良かったのではないかと思いました。テレビ放送で見た場合、滑走する選手の横からのアングルが多く比較的簡単なコースに見えますが、ポールの振り幅が多く深いターンが要求されるものであり、一般の人ではあそこまで流れよく滑ることが難しいほどでした。
日本男子代表の鶴岡選手は、積極的なライディングを見せましたがターンでミスをしてしまいました。リズム取りに大切な最初の4旗門で、もう少しボードの走りとあった積極的な滑りができていれば、良いタイムが出ていたのではないかと思いました。しかし、わずかにタイミングが遅れただけで、大きなミスとなってしまう程コースの状況はとても硬くしまっており、そのタイミングの遅れを引き起こさせるものもオリンピックという大きな舞台のためだと思いました。今まで日本人男子がこの種目のみに参戦できなかったという過去から、初出場という新時代の扉を開けた彼には大きな賞賛を送りたいと思います。これは、もちろん彼の努力の賜でありますが、オリンピックの大舞台で滑走するという大きな夢を彼に託して支え続けた多くの人達の協力と努力があってのことであることを決して忘れてはならないと思います。
日本人女子は、竹内選手が決勝1回戦を突破し9位、屋根谷選手は18位という結果でした。1回戦目でわずか0.24秒という差で2回戦目に進めず、ワールドカップで3位入賞を果たしている竹内選手からすれば、とても悔しい結果と思われますが、私は急斜面を得意とする彼女としては決して悪くない順位であると思います。それは、急斜面が含まれるバーンであればこれよりもさらに良い順位が期待されることや、頑張り屋の彼女は、今回の経験をばねに更にレベルアップし、真の世界トップ選手になると思われるからです。今後やや苦手な緩斜面で世界のトップの滑りを身につければ、得意の急斜面とあわせてさらに速くなり、メダル獲得は間違えないものと思います。

2月22日にTBS系テレビにコメンテーターとして出演した際に感じたことを少しお話ししたいと思います。
番組の中で放送していたフィギアスケートの録画VTRを中居君と小倉アナと一緒に見ながら話しをしている中で、「フィギアスケートって確かにすごいけれど人間離れしているので、出来るとは思いづらいし、やってみたいとあまり思わないけど、この種目(パラレルジャイアントスラローム)って、日常的に行えるスポーツだし、なんせスピード感があってかっこいいよね。俺もスノーボードを再びやってみたいと本当に思ったよ」「流れるように止まらない動きがすごく美しくて素敵。」と言うようなコメントがありました。
スノーボードについて現状では、「スノーボード=跳び、回転」と言うイメージが強いように思われがちですが、スキーやスケートでもスピードを競う種目や、技や回転を競うさまざま種目があり、皆さんはそれぞれの趣向により各種目を楽しまれていると思います。パラレルジャイアントスラロームは、スノーボードにおいてスピードを競う種目の一つであり、ゲレンデでの滑走の延長線上にあるものと言えますので、一般の方がもっとも始めやすい競技であると思います。是非とも多くの方がこのパラレルジャイアントスラローム種目を楽しまれることを心より応援していきたいと思っています。

次回もまた皆さんのお役に立てるようなことをお話したいと思います。楽しみにしておいてくださいね。
2006年03月01日(水) No.2 (コラム)

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